在台日系企業における生成AI活用の出発点

本記事は、2023年4月に公開した「在台日系企業におけるChatGPTのインパクト」を、現在の生成AI活用環境に合わせて再構成したものです。

生成AIは、単に文章を作る道具ではありません。日本本社と台湾拠点の間で発生する資料整理、翻訳、報告、確認作業の負担を下げるための実務ツールとして考えると、導入すべき場所が見えやすくなります。

在台日系企業で起きやすい業務課題

台湾の日系企業では、次のような作業が日常的に発生します。

  • 繁体字中国語の資料を日本語で要約する
  • 日本本社向けに台湾現地の状況を説明する
  • 社内資料、会議メモ、報告書の表現を整える
  • kintone や Excel に蓄積された情報を、定例報告の形にまとめる
  • 台湾側の制度、商習慣、取引先資料を日本語で確認する

これらは専門判断そのものではありませんが、対応できる人が限られやすく、現場のボトルネックになりがちです。生成AIが効きやすいのは、このような「人が確認する前の下準備」です。

生成AIが向いている作業

生成AIは、次のような作業で効果を出しやすいと考えられます。

  • 長い文章を読みやすい粒度に要約する
  • 繁体字中国語と日本語の間で、一次翻訳を作成する
  • OCR やコピーで崩れたテキストを整形する
  • 報告書、議事録、メール文面のたたき台を作る
  • 既存データをもとに、確認観点や不足情報を洗い出す

一方で、生成AIの出力は最終成果物ではありません。特に会計、法務、人事、契約、顧客対応などでは、必ず人が確認し、責任を持って判断する前提が必要です。

例: 台湾企業の公開資料を日本語の参考資料にする

旧記事では、台湾上場企業の財務報告資料を例に、繁体字中国語のPDFを日本語の参考資料にする流れを紹介しました。

台湾上場企業の財務報告PDFの例

このような資料は、コピーした文字列に不要な空白や改行が混ざりやすく、そのまま翻訳しても読みづらい結果になりがちです。

実務では、いきなり翻訳するのではなく、次のように段階を分ける方が安定します。

  1. PDFや画像からテキストを抽出する
  2. 不要な空白、改行、文字化けを整える
  3. 原文の構造を保ったまま意味を確認する
  4. 日本語へ一次翻訳する
  5. 専門用語、数値、固有名詞を人が確認する

この流れに生成AIを組み込むことで、翻訳や整理の初稿作成にかかる時間を減らせます。特に、参考資料の作成、社内検討用の下訳、現地資料の概要把握には実用性があります。

今はエージェント活用まで視野に入る

2023年当時は、Web画面に文章を入力して回答を得る使い方が中心でした。現在は、Claude Code や Codex のようなエージェント型ツールにより、許可した範囲のファイル、コマンド、API、業務データを扱わせる使い方も現実的になっています。

例えば、kintone の営業活動データを分析して週次報告のたたき台を作る、期間内に受領した統一発票の情報から費用精算データの入力を補助する、といった活用が考えられます。

重要なのは、生成AIに丸投げすることではありません。どのデータへアクセスさせるか、どの操作を許可するか、どこで人が確認するかを設計したうえで、現場の作業負担を減らすことです。

導入時に先に決めること

生成AIを業務に使う前に、少なくとも次の点は整理しておくべきです。

  • 入力してよい情報、入力してはいけない情報
  • 個人利用、部門利用、会社利用のどこまで許可するか
  • 翻訳、要約、報告書作成など、最初に対象とする業務
  • 出力結果を誰が確認し、どの範囲で利用するか
  • API やエージェントを使う場合の認証、ログ、権限管理

ここを曖昧にしたまま導入すると、便利な個人ツールとしては広がっても、会社として再現性のある業務改善にはつながりにくくなります。

まとめ

在台日系企業にとって、生成AIの価値は「新しい技術を試すこと」ではなく、日々の資料整理、翻訳、報告、確認作業を現実的に軽くすることにあります。

まずは小さな業務を選び、入力情報と確認責任を明確にしたうえで、実務に組み込むことが重要です。

生成AIやエージェントの業務適用については、生成AI・エージェント活用支援 もご確認ください。